(1)価格改定 ①値上げ
(1)価格改定
まずは、価格改定について説明しましょう。
①値上げ
昨今は、原油高などの影響により、値上げをする企業が増えています。
(相次ぐ値上げ) キッコーマンは2007年12月14日、全しょうゆ製品を2008年3月16日出荷分から値上げすると発表。メーカー希望小売価格で約11%引上げ。値上げは1990年9月以来約17年ぶり。2007年12月12日明治乳業など乳業大手が30年ぶりに牛乳の値上げを決めた。明治乳業は2007年12月12日、マーガリンやチーズなど計84品目を2008年3月に値上げすると発表。マーガリンの値上げは21年ぶり。森永乳業は2007年12月14日、ヨーグルト、デザート、飲料、アイスクリームの合計64品目を2008年3月に3.3―20%値上げすると発表。森永乳業がヨーグルト、デザートなどを全体的に値上げするのは34年ぶり。 ニチロは2007年12月13日、「あけぼの」ブランドの冷凍食品30品目を2008年2月から値上げすると発表。主要製品の一斉値上げは1990年以来、18年ぶり。値上げ率は4―11%。 |
この値上げ、実は、想像以上に利益を押し上げる場合があるのです。
仮に、ある会社は、現在、売上高が100億円、仕入れに30億円、販売管理費に67億円かかっているとします。この場合、現在、営業利益は3億円です(売上高営業利益率3%)。もし、1%の値上げに成功したらどうなるでしょうか。売上高は101億円に増加する一方で、仕入れ(30億円)と販売管理費(67億円)は変化しないので、営業利益は4億円となり、増益額は1億円となります。増益率でみると、なんと33%(=1/3)の大幅増益です。
売上高営業利益率10%の場合はどうでしょうか。増益額は1億円と同じです。増益率は少し落ちますが、それでも10%(=1/10)の大幅増益です。
これで、値上げは利益に大きな影響を与えることがあることを理解いただけたでしょうか。
ただし、この事例は、ある前提にたっています。値上げしても売上数量が減らないという前提です。実際には、値上げをすれば、ある程度数量が減りますので、先ほど説明したほどの効果はありません。
【売上高営業利益率3%】 | |||
値上げ前 | 値上げ後 | 変化率 | |
売上高 | 100 | 101 | 1.0% |
-仕入れ | 30 | 30 | 0.0% |
売上総利益 | 70 | 71 | 1.4% |
-販売管理費 | 67 | 67 | 0.0% |
営業利益 | 3 | 4 | 33.3% |
【売上高営業利益率10%】 | |||
値上げ前 | 値上げ後 | 変化率 | |
売上高 | 100 | 101 | 1.0% |
-仕入れ | 30 | 30 | 0.0% |
売上総利益 | 70 | 71 | 1.4% |
-販売管理費 | 60 | 60 | 0.0% |
営業利益 | 10 | 11 | 10.0% |
(値上げは小まめに!)
大幅な値上げが必要な場合、一度に行うか、徐々に行うか悩むところです。
消費者に受け入れてもらうためには、少しずつ値上げした方がよいといわれています。というのは、消費者は自分なりの値頃感をもっています。これを学問的には内的参照価格といいます。この値頃感(内的参照価格)には、ある程度の幅があり、この範囲内の値上げであれば、違いがほとんど認識されないのです。つまり、受け入れられるのです(「同化」)。そして、新しい値段に徐々に慣れてきて、値頃感が上方に修正されるのです。その頃にまた小幅な値上げをすればよいのです。一方、値頃感の範囲を超えた値上げは、はっきりと値上げと認識(「対比」)され、拒否される可能性が高まるのです。例えば、洗濯用洗剤の場合は、幅は±6%程度といわれています。したがって、10%の値上げが必要であっても、一度にやるより、5%ずつ2回に分けて値上げした方がよいのです。これを同化対比理論といいます。
反対に値下げの場合は、値頃感の範囲を超えて一度に大胆な値下げを行った方が効果があるのです。実際、マクドナルドや吉野家の値下げも消費者がびっくりするほどの大幅値下げでした。
(乗り換え費用)
値上げが成功するかどうかは、企業側としては非常に気になるところです。
成功するかどうかを決める要因として大きなものに、乗り換え費用があります。乗り換え費用とは、現在使っている製品から他社の製品に乗り換える際のコストです。「スイッチングコスト」とも呼ばれます。この乗り換え費用が高い場合は、少々値上げしても他社の製品に乗り換えられる恐れはありません。
(原料が理由なら仕方ない)
値上げが成功するかどうかは、その理由によります。ある調査によると「原材料の高騰」を理由にした値上げは比較的受け入れられやすいようです。たまに原材料の値上がり率と同じ比率で値上げをする場合も見受けますが、コストに原材料が占める比率が低いことが分かっているのに、大幅な値上げをすると便乗値上げだと顰蹙(ひんしゅく)をかいますのでお気を付けください。